コンテンツにスキップ

対話型AIとAIエージェント

解説約5分で読めます

「AIエージェント」という言葉を、最近よく耳にするようになりました。けれど、いつも使っている ChatGPT のような対話型AIと何が違うのか、はっきりしないかもしれません。違いは、AIの種類ではなく使い方にあります。質問して答えてもらうのが対話型AI、目的を渡して、必要な作業を進めてもらうのがAIエージェントで、同じ ChatGPT のような製品の中に、この二つの使い方が共存していることもあります。この記事では、AIを「脳」にたとえて、その違いと、その先の使い方への入口を整理します。

生成AIの本体は、いわば脳です(その仕組みは 生成AIとは何か で扱いました)。言葉を理解し、文章を組み立てる力はあります。けれど脳は、頭の中にあるだけでは外の世界と何もやり取りできません。話すこともできなければ、手を動かすこともできない。

だからAIを実際に使えるようにするには、脳に「外とつながる体」を与える必要があります。何を与えるかで、AIにできることが変わります。

脳に何をつけ足すか。大きく二つあります。

  • 言葉の窓口(口と耳)を与える → 話しかけると、言葉で答えてくれる。ChatGPT などに問いを投げて答えをもらう、いちばん基本の使い方です。これが対話型AIです。
  • 手を与える → 自分で道具を使えるようにする。Webを検索したり、ファイルを開いたり、調べた内容を資料や表にまとめたりできる。この「手」を使って、目的に向かって自分で動けるようにしたのが、AIエージェントです。

ChatGPT のような製品にも、こうした作業をある程度まとめて任せられる機能が備わってきています。質問して答えをもらうか、目的を渡して作業を進めてもらうか——どちらの使い方になるかは、何を頼むか、どの機能を使うかで決まります。

エージェントは「自分で動いて仕上げる」

Section titled “エージェントは「自分で動いて仕上げる」”

二つの使い方を、具体的な仕事で見てみます。

質問して答えてもらう場合。 「このお客様へお詫びするメールの文面を考えて」と頼むと、文章を返してくれます。それをコピーして、メールに貼って、宛先を入れて送る——その作業は自分でやります。この使い方では、AIの役割は答えを出すところまでです。

目的を渡して、作業を進めてもらう場合。 「競合3社の料金プランを調べて、比較表にして」と頼むと、AIが自分でWebを検索し、ページを読み、必要な数字を拾い、表に組み立てるところまで進めます。途中で情報が足りないと気づけば、もう一度調べに行くこともあります。段取りを立て、道具を使い、結果を見て次の手を決める——これを自分で繰り返して、成果物まで持っていく。 これがエージェントです。

大事な点は2つで、特に2つ目が決め手です。

  1. 道具を使って、実際に外の世界で動く(Webを検索する、資料を作る、など)。ただし、これ自体は質問に答える使い方の中でも行われることがあります。
  2. 結果を見て、次に何をするかを自分で決め、目標に届くまで繰り返す。 これがエージェントの核心です。

人が一手ずつ指示しなくても、目的を渡せば自分で進んでいく。ここが「答えて終わり」の使い方との違いです。

ひとつ、混同しやすい点を解いておきます。

いまのAIは、答える前に頭の中で段取りを組んで、深く考えることがあります。ごく初期のチャットは一問一答に近いものでしたが、今は「まずこれを考え、次にこれ」と段階を踏んで答えを練ります。これを見て、「自分で段取りするなら、それがエージェントでは?」と思うかもしれません。

けれど、この“深く考える”は頭の中だけの話で、質問に答えるだけの使い方でも普通に行われています。エージェントが違うのは、その段取りを実際に外の世界で実行し、道具を使い、結果を見て動き続けるところです。つまり——「考えるだけ」か、「自分で動いて仕上げる」か。線引きはここにあります。段取りを組むこと自体は、エージェントだけのものではありません(答える前にどれだけ考えさせるかは すぐ答えさせるか、じっくり考えさせるか で扱います)。

  • 「エージェント=何でも全自動でやってくれる」ではありません。 自分で動けるようになっても、AIの中身が賢くなるわけではありません。計算が苦手、事実をよく間違える、といった弱点はエージェントでも変わりません(→ できること・できないこと)。先ほどの料金の比較表も、拾った数字が正しいとは限りません。むしろ自分で動く分、間違ったまま先へ進んでしまうこともあります。
  • 「手を持った=人格を持った」ではありません。 自分で段取りして動く姿は人間らしく見えますが、考えているわけではなく、相変わらず確率で言葉を選んでいるだけです(→ 考えているわけではない)。

AIの本体は脳のようなもので、それ単体では外とやり取りできません。言葉の窓口を与えて、質問に答えてもらうのが対話型AIの使い方。手(道具を使う力)を与えて、目的を渡し、結果を見ながら必要な作業を繰り返して仕上げてもらうのがAIエージェントの使い方です。二つは別々のAIというより、同じ製品の中にもある二つの使い方で、違いは答えてもらって終わるか、作業まで進めてもらうかです。

エージェントは「その先の使い方」への入口です。ただし、何でも任せられる魔法ではありません。どの仕事を任せるかは自社の仕事を分解して見極める必要がありますし(「自社の仕事に当てはめる」)、どう頼むかでも結果は変わります(「うまく頼むコツ」)。脳に体を与えても、それを使いこなすのは私たちの側だ、ということです。

Last updated: