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AIに訊くか、プログラムに解かせるか

解説 約4分で読めます

「先月までの仕入れ値をもとに、来月どれだけ発注するか決めたい」——こうした数字の絡む課題を前にしたとき、取りうる道は3つあります。AIに直接訊く/AIにプログラムを書かせて解く/人が決める。どれを選ぶかは、好みではなく、その仕事の性質で決まります。この振り分けができると、AIに何を任せ、何は任せないかで迷わなくなります。

ここまでの2本——AIは計算を自分でせずプログラムに外注している(計算しているわけではない)、そのプログラムでは計算・集計・分析ができる(プログラムで何ができるか)——を、いよいよ自分の業務に当てはめます。

3つの道と、それぞれが向く仕事

Section titled “3つの道と、それぞれが向く仕事”

同じ課題の中にも、性質の違う仕事が混ざっています。それぞれに向いた道があります。

  • AIに直接訊く … 正解が一つに決まらず、多少ぶれてよい「言葉の仕事」。要望メモの整理、交渉の進め方の相談、文面のたたき台づくりなど。AIがいちばん得意な領域です(→ できること・できないこと)。
  • AIにプログラムを書かせて解く … 正確さ・再現性が要る「計算の仕事」。合計・集計、大量データの変換など。AIに直接これらの数字を出させると当てずっぽうですが、AIにプログラムを書かせて計算させれば、プログラムが正しく書けて実行されるかぎり、合計や集計は確実に正しく出ます。過去の数字から先を見積もる予測も、勘よりは根拠のある推計にできます(とはいえ予測である以上、外れることはあります)(→ プログラムで何ができるか)。
  • 人が決める … 価値判断や責任を伴う「決め」。最終的にいくつ発注するか、その金額で勝負するか、どの案で提案に臨むか。AIやプログラムが出した材料をもとに、決めるのは人の仕事です。

ひとつの業務の中で、振り分ける

Section titled “ひとつの業務の中で、振り分ける”

実際の業務は、この3つが混ざっています。冒頭の「仕入れ値をもとに発注量を決める」を、性質ごとに分けてみましょう。

やること性質
過去の仕入れ値から来月の見込みを数字で出す正確さが要る計算プログラム
値動きの背景や交渉メモを整理・要約するぶれてよい言葉AIに直接
在庫リスクや資金繰りを踏まえ、発注量を決める責任を伴う判断

ひとつの課題を「丸ごとAIに」と考えると行き詰まりますが、こうして仕事を性質ごとに分けてから振り分けると、それぞれに正しい道が見えてきます。仕事をさらに細かく入力・作業・出力に分ける手順は、仕事を分解するで扱いました。まず分けること——それが振り分けの前提です。

これは「自分の仕事のどこをプログラム・AI・人に振り分けるか」という大きな問いの、数字・計算が絡む場面に絞った一例です。けれど、数字を扱う仕事ほど「AIに直接訊いて、それっぽい答えで済ませてしまう」事故が起きやすいので、ここを見分けられることの効きは大きいといえます。

最後に、このシリーズ全体を貫く視点にふれておきます。AIを使いこなすには、AIだけを知っても、自社の業務だけを知っても足りない、ということです。

冒頭の例で「来月の見込みはプログラムに出させよう」と判断できるのは、その裏で「数字から傾向を読むのは計算で、それはプログラムでできる」とうっすら見当がつくからです。この見当は、AIの知識でも業務の知識でもなく、統計やITの素養から来ています。

整理すると、AIの使いこなしは、AIの理解と自社業務の理解という「両輪」に、統計・ITの「土台」が加わって支えられています。土台といっても、専門家になる必要はありません。「これは計算だからプログラムの仕事」「これは言葉だからAIの仕事」と見当がつく程度で、振り分けの精度はぐっと上がります。

数字や計算が絡む業務課題を前にしたら、AIに直接訊くか、AIにプログラムを書かせて解くか、人が決めるか——仕事の性質で振り分けます。正解が一つに決まらない言葉の仕事はAIに、正確さが要る計算はプログラムに、責任を伴う判断は人に。ひとつの業務の中でも、分解すれば振り分けられます。

そして、この振り分けを支えるのは、AIと業務理解の両輪に加えた、統計・ITのうっすらとした土台です。AIを使いこなすとは、AIに詳しくなることだけではなく、こうした見当をつけられるようになることでもあります。

最終点検: 2026年6月11日