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優秀だが自社を知らない新人

解説

AIに頼んでみたけれど「思ったほど使えない」と感じたことはないでしょうか。その正体は、たいてい能力不足ではありません。AIは優秀だが、あなたの会社のことは何も知らない新人——そう思って付き合うと、なぜ期待外れに見えるのか、どう頼めばうまくいくのかが、まとめて見えてきます。

一流大学を出た、入社初日の新人

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AIを、こんな人物にたとえてみます。一流大学を優秀な成績で卒業した、頭の回転は速い。文章も書けるし、調べ物も早い。でも今日が入社初日で、あなたの会社のことは何ひとつ知りません。扱っている商品も、価格表も、取引先との関係も、社内の事情も、まったくの白紙です。

この新人に「見積書を作っておいて」と頼んでも、まともなものは出てきません。能力が低いからではありません。商品名も、単価も、取引条件も知らないのだから、作れなくて当然です。

AIが期待外れに見えるときも、これと同じです。足りないのは能力ではなく、あなたが当たり前に知っている前提。それがAIには渡っていないだけです。

なぜ人間には「これやっといて」で通じるのか

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ここで、ふと疑問がわきます。同じことを社内の人に頼むときは、「例の件、やっといて」で通じることがある。なぜAIには通じないのか。

違いは、背景の入り方にあります。

人間は、同じ職場に毎日いるだけで、背景が勝手に入ってきます。隣の電話の話し声、朝礼で流れる連絡、机に置かれた資料、雑談で耳にした事情——目と耳から、状況が絶え間なく流れ込んでいます。「これやっといて」で通じるのは、相手がその場で背景を勝手に吸収しているからです。

AIには、それが勝手には入ってきません。あなたと同じ場所に居続けて状況を眺めているわけではないからです。だから、人間相手なら省ける前提を、AIには言葉にして渡す必要があります。この渡してあげる背景が コンテキスト です。

つまり、人間とAIの差は「頭の良さ」ではなく、背景が勝手に入ってくるかどうか。その差分を埋めてあげるのが、うまく頼むということです。

叱る相手ではなく、教える相手

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新人が初日に戦力にならなくても、あなたは怒ったりしません。教えれば済むと分かっているからです。商品を説明し、価格表を渡し、過去のやりとりを共有すれば、優秀な新人ほど早く呑み込みます。

AIも同じです。「使えない」と切り捨てる相手ではなく、背景を教える相手だと考える。そう構えるだけで、頼み方が変わります。うまくいかないとき、つい指示を細かく盛りたくなりますが、足りないのはたいてい指示ではなく背景の方です。

実際、入社初日の新人より、数ヶ月いる新人の方が呑み込みが早い。それは頭が良くなったからではなく、その間にコンテキストを溜めたからです。AIは放っておいても背景が溜まらない分、こちらが渡してあげればいい。渡せば渡すほど、もともとの優秀さが活きてきます。

AIは、優秀だが自社を知らない新人です。期待外れに見えるのは能力のせいではなく、背景が渡っていないから。人間が同じ場所で勝手に吸収している前提を、AIには言葉にして渡す——そう考えると、付き合い方の軸が定まります。

では、その背景を具体的に何から渡せばいいのか。それは「指示と背景をセットで渡す」で扱います。なお、ここで「新人」とたとえましたが、AIが人のように考えたり気持ちを持ったりするわけではありません。その点は「考えているわけではない」を参照してください。