コンテンツにスキップ

Markdownで書いてみる

チュートリアル 約7分で読めます

散らかった走り書きも、いくつかの記号を覚えるだけで、見出し・箇条書き・表のついた整った文書に変わります。その記号の付け方が Markdown です。

構造化して渡す」では、AIに頼むだけなら特別な記法は要らない、手元のメモと同じ感覚で仕分ければ十分、と書きました。それはそのとおりです。ただ、その整理を支える共通の書き方が Markdown で、覚えておくと、表や入れ子のような込み入った構造まで崩さずに書けるようになります。人にもAIにも、同じ形のまま渡せる——いわば構造の共通語です。

この記事では、説明を読み込む前に手を動かします。散らかった社内共有メモを1枚、Markdown で整った文書に起こしてみましょう。

題材にするのは、こんな走り書きのメモです。

来月から問い合わせ対応を見直したい。今は電話とメールで窓口が分かれていて取りこぼしがある。共有ツールを試したい。候補はAとB。Aは安いけど機能は最小限、Bはやや高いけど問い合わせを一元管理できる。まず無料プランで2週間試す、担当は田中。そのあとみんなで使用感を持ち寄ってどっちにするか決める。9月末までに結論を出したい。

言いたいことは詰まっていますが、どこが見出しでどれが候補の比較なのか、ぱっと見では追えません。これを最後まで進めると、見出しで区切られ、候補が表で見比べられ、進め方が番号で並んだ、1枚の整った文書になります。

  • 記号を打てる場所。記号を打つだけなら、メモ帳のような素のテキストエディタでも、チャットの入力欄でも構いません。特別なソフトは要りません。
  • 自分の散らかったメモをひとつ。手元になければ、上のお手本をそのままなぞってください。

ここでやるのは記号を打つ練習なので、この回ではAIにはまだ渡しません。なお、打った記号が見出しや表の見た目に変わるところは、ステップ3で確かめます。それも、ふだん使っているチャットやWebの画面で十分です。

各ステップで、お手本(問い合わせ対応メモ)と、あなたの番(自分のメモで同じことをする欄)を並べます。お手本をなぞりながら、自分のメモを少しずつ整えてください。

まず、メモを内容のかたまりに分け、それぞれに見出しを付けます。行頭に # を置くと見出しになります。# ひとつがいちばん大きい見出し(文書のタイトル)、## がその下の中見出しです。記号のあとに半角スペースを1つ空けるのを忘れずに。

お手本

# 問い合わせ対応の見直し
## 背景
## 候補ツールの比較
## 進め方
## 期限

あなたの番

# ____(全体のタイトル)
## ____
## ____

これだけで、文書の骨組みができました。あとは、それぞれの見出しの下に中身を入れていきます。

2. 並ぶものは箇条書き、順番のあるものは番号

Section titled “2. 並ぶものは箇条書き、順番のあるものは番号”

項目がいくつか並ぶところは、文章に埋め込まず、行頭に - を置いて一行ずつ並べます。順番に意味があるなら、1. 2. 3. と番号を振ります。ある項目の下にさらに細目をぶら下げたいときは、行頭を少し字下げ(半角スペース2つが目安)してから - を置くと、入れ子(階層)になります。

お手本——「進め方」は手順なので番号、「候補」は各案の下に中身を字下げして入れ子にします。

## 進め方
1. 無料プランで2週間試す(担当:田中)
2. みんなで使用感を持ち寄る
3. どちらにするか決める
## 候補
- A
- 月額は安い
- 機能は最小限
- B
- 問い合わせを一元管理できる
- 月額はやや高い

あなたの番

## ____
1. ____
2. ____
## ____
- ____
- ____(下にぶら下げる細目)
- ____

ここが Markdown の本領です。さきほどの候補は入れ子でも書けましたが、A と B を月額・特徴という同じ観点で見比べるなら、表のほうが向いています。複数のものを同じ観点で並べて比べたいときは、表にします。縦棒 | で列を区切り、2行目に |---|---|---| と区切り線を入れる。これだけで表になります。

お手本

| ツール | 月額 | 特徴 |
|---|---|---|
| A | 安い | 機能は最小限 |
| B | やや高い | 問い合わせを一元管理できる |

いま | で書いたこの記号は、メモ帳のような素のテキストエディタでは、記号のまま見えます。ですが、Markdownに対応した画面——チャットの画面や、プレビュー機能のあるメモアプリ、いま読んでいるようなWebページなど——で表示すると、こう整形されます。

ツール月額特徴
A安い機能は最小限
Bやや高い問い合わせを一元管理できる

書くときは、いつも記号のままで構いません。見出しや表という“見た目”は、表示する画面のほうが作ってくれます。だから、整形された姿が見たいときだけ、対応した画面で開けば十分です。

同じことを自己流で「A=月額は安いが機能は最小限、B=やや高いが一元管理できる」と書いても、意味は通じます。ですが、ツールが3つ4つに増え、見る観点も増えていくと、どれがどの値なのかを目で追うのが急につらくなります。表なら、行と列の交わるところを見るだけで済む。込み入った構造ほど、自己流の整形では追いにくくなり、Markdown の記法が効いてきます。

あなたの番——見比べたいものがなければ、このステップは飛ばして構いません。

| ____ | ____ | ____ |
|---|---|---|
| ____ | ____ | ____ |

最後に、いちばん落としたくない一語を ** で挟むと、太字になります。使うのは一文書に一つ二つだけ。あちこち太字にすると、どれも目立たなくなります。

お手本

## 期限
**9月末まで**に結論を出す。

あなたの番

## ____
**____**

手元のメモを見てください。次の3つがそろっていれば、完了です。

  • ### で、内容のかたまりが見出しに分かれている。
  • 並ぶものは箇条書き、順番のあるものは番号、見比べるものはになっている。
  • 全体が、上から下へ1枚で見通せる。

お手本は、最初の走り書きが、こう変わりました。

# 問い合わせ対応の見直し
## 背景
電話とメールで窓口が分かれていて、問い合わせを取りこぼすことがある。共有ツールで一元管理したい。
## 候補ツールの比較
| ツール | 月額 | 特徴 |
|---|---|---|
| A | 安い | 機能は最小限 |
| B | やや高い | 問い合わせを一元管理できる |
## 進め方
1. 無料プランで2週間試す(担当:田中)
2. みんなで使用感を持ち寄る
3. どちらにするか決める
## 期限
**9月末まで**に結論を出す。

中身はほとんど足していません。同じ情報を、記号で構造づけて並べ直しただけです。それでも、見出しで道筋が立ち、候補が一目で見比べられ、やることが順に追えるようになりました。

この形は、そのままAIにも通じます。AIに渡すときは、整形して見せる必要すらありません——記号のままチャット欄に貼れば十分です。AIが記号の意味を理解しているわけではありません(→ 考えているわけではない)。大量の Markdown を学習で見てきたぶん、#| を構造の区切りとして扱い慣れている、ということです。逆に、AIの答えが見出しや表で読みやすく返ってくるのも、AIが Markdown で書き、チャットの画面がそれを整形して見せているからです。こちらは記号のまま渡し、返ってきた答えは整形されて読める——同じ書き方で、やりとりが噛み合いやすくなります。

ここで整えたメモは、そのままAIへの入力に使えます。先頭に「この内容を社内向けの案内文に清書して」のような指示を足せば、構造を保ったまま処理してくれます——指示と素材の組み合わせ方は「構造化して渡す」に戻ると、今度は記法込みで読み直せます。

そして、Markdown で書いた文書は、.md という拡張子のテキストファイルとして保存もできます。テキストだからこそ、人にも、AIにも、別のアプリにも、形を保ったまま渡していける——その土台の話は「テキストとバイナリ」にあります。

慣れるほど、頭の中の散らかりを、そのまま整った形に書き出せるようになります。まずは次に誰かへ送るメモを1枚、Markdown で書いてみてください。

最終点検: 2026年6月14日