構造化して渡す
解説
AIにあれもこれもと盛り込んだ相談を、一息に書き流していませんか。同じ内容でも、見出しや箇条書きで整理して渡すだけで、返ってくる答えはぐっと安定します。指示・背景・素材の境界がはっきりした文章には、的を射た答えが返りやすく、だらだらと続く長文では、肝心なところを取りこぼしがちだからです。
なぜ整理すると伝わるのか
Section titled “なぜ整理すると伝わるのか”人に分厚い資料を渡すとき、見出しも改行もない一枚の文章だったら、読む方は苦労します。どこからどこまでが本題で、どれが補足なのか、自分で区切りながら読まなければなりません。整った入力ほど扱いやすいのは、AIでも似たところがあります。
AIに渡す文章には、たいてい性質の違うものが混ざっています。「やってほしいこと(指示)」「どういう状況か(背景)」「材料となる本文やデータ(素材)」——この三つです。これらが地続きの一文に溶け込んでいると、境界が曖昧になり、指示が素材の一部に紛れたり、肝心の条件が読み飛ばされたりします。
ここで押さえておきたいのは、AIが文章の意味を理解して仕分けているわけではない、ということです(→ 考えているわけではない)。AIは確率で次の言葉を選んでいるだけで、整理された入力には、整理された的確な答えが返りやすいという傾向があるにすぎません。だから、見出しや箇条書きで区切ってあると、条件の取り違えが起きにくくなります。整理とは、AIのための飾りではなく、情報の境界をはっきりさせる作業なのです。
整理の道具立て
Section titled “整理の道具立て”特別な記法は要りません。次のような、ふだん使う整え方で十分です。
- 箇条書き — 条件や項目が複数あるなら、文章に埋め込まず、一行ずつ並べる
- 見出し(ラベル) — 「【依頼】」「【背景】」「【元の文章】」のように、かたまりに名札をつける
- 番号 — 手順や優先順位があるなら、1, 2, 3 と振って順序を示す
- 区切り — 「---ここから資料---」のように、素材の始まりと終わりを明示する
要は、人が読んで分かりやすく整えれば、AIにとっても分かりやすい。あなたが日頃メモや資料でやっている整理を、そのままチャットに持ち込むだけです。
たとえば、打ち合わせの走り書きメモを議事録に整えてほしい、という相談。これを一息で書くと、こうなりがちです。
昨日の打ち合わせのメモを議事録にしたいんだけど次にやることが分かるようにして一枚に収めてほしくて以下がメモです価格は据え置きで決定 山田さんが見積もり再送 納期は来月末で先方確認待ち 次回は15日依頼も条件もメモ本体も地続きで、どれが守るべき条件か、メモがいくつあるのかも、ぱっと見では分かりません。これを整理すると——
【依頼】打ち合わせメモを議事録に整える【目的】次にやること(アクション)が一目で分かるように【条件】A4一枚に収める【メモ】---ここから---・価格は据え置きで決定・山田さんが見積もり再送・納期は来月末で先方確認待ち・次回は15日---ここまで---中身は何も足していません。同じ情報を、名札で仕分け、メモ本体を区切りで囲っただけです。それでも、どこが指示でどこが素材かがはっきりし、メモの一行を指示と取り違えるようなことが起きにくくなります。
つまずきやすいところ
Section titled “つまずきやすいところ”- 整形に凝りすぎる。 きれいなレイアウトを作ることが目的ではありません。狙いは「指示・背景・素材の区別がつくこと」。名札と箇条書きで仕分けがつけば、それで十分です。
- 短い依頼まで構造化しようとする。 一言二言で済む頼みごとに名札は要りません。整理が効くのは、条件や材料が複数あって、混ざると分かりにくくなる相談です。
- 記法そのものに身構える。 「#」や記号の正しい書き方を覚える必要はありません。手元のメモと同じ感覚で、見出しと箇条書きが使えれば足ります。
整った入力には、的を射た答えが返りやすい。だから、ストーリーのまま書き流すより、見出し・箇条書き・ラベルで整理して渡す方が、指示も条件も取りこぼされにくくなります。難しい記法は要りません。人が読んで分かりやすい整え方が、そのままAIにも効きます。
伝え方を補う手は、整理だけではありません。欲しい「形」を見本で示す具体例や型を見せて頼むも、あわせて使うと効きます。なお、ここで使った整理の地力そのものは、IT基礎「情報を構造化する(Markdown入門)」で扱います(順次公開)。