はじめに
生成AIを仕事で使う人が、ずいぶん増えました。メールの下書き、文章の要約、アイデア出し。使ってみると確かに便利で、手応えもある。そうなると、次のことをやりたくなります。
もっと複雑な仕事を任せたい。手元のデータも扱いたい。業務そのものを効率化したい。今まで人がやっていたことを、AIにやらせたい。
さとりのしょは、そうやって次の段階へ進もうとしている人に向けて書いています。
次の段階で、壁にぶつかる
Section titled “次の段階で、壁にぶつかる”生成AIについて人と話したり、相談を受けたりする中で、気になることがありました。先へ進もうとして、壁にぶつかっている人が少なくないのです。文章を作らせていた頃はうまくいっていたのに、少し込み入ったことを頼んだとたん、思うような結果が出なくなる。
そこで多くの人は、工夫を始めます。プロンプトを何度も書き換える。データの渡し方を変えてみる。別の生成AIを試してみる。もっと高性能なAIならできるのではないか、と考える。
自分の手で試すこと自体は、とても良いことだと考えています。ただ、話を聞いていると、つまずきの原因は、頼み方やAIの性能よりも、もっと手前にあると感じることがよくあります。生成AIという道具は、そもそも何をするものなのか。 そこを確かめる機会のないまま、先へ進もうとしている人が多いのです。
無理もありません。生成AIは、仕組みを知らなくても使い始められる道具だからです。けれど、道具の性質を知らないと、その道具が得意ではない問題まで渡してしまうことがあります。そして、うまくいかない理由が分からないので、頼み方やAIを変える工夫だけが続いていく。本来ならぶつからなくてよい壁にぶつかり、成果につながりにくい方向へ、長く努力してしまう。
それは、あまりにもったいないことです。さとりのしょを作ろうと思った、大きな理由がここにあります。
まず使う。基礎に戻るのは、そのあとでいい
Section titled “まず使う。基礎に戻るのは、そのあとでいい”さとりのしょは「使う前に、まず原理原則から勉強しましょう」という立場ではありません。むしろ逆です。
まず使ってみればいい。たくさん試せばいい。生成AIは、実際に触ってみて初めて分かることが、とても多い道具です。使った経験がないうちは、生成AIの仕組みやITの基礎を学んでも、それが何の役に立つのか、実感しにくいものです。
ある程度使って、「もっとできそうだ」「もっと仕事に使いたい」と思い始める。そうして次の段階へ進もうとするときに、一度基礎へ戻る。基礎を知ることに大きな意味が出てくるのは、そのタイミングです。自分で試してきた経験があるからこそ、「あのときうまくいかなかったのは、そういうことか」とつながります。
もう一段先へ進みたい人へ
Section titled “もう一段先へ進みたい人へ”読んでほしいのは、すでに生成AIを仕事で使い始めていて、もう一段先へ進みたい人です。
中心に想定しているのは、経営者や管理職のように、仕事や業務の全体を考える立場にいる人。生成AIを、自分の作業だけでなく、職場や組織にどう取り入れるかを考えている人です。とはいえ、肩書きで線を引くつもりはありません。生成AIを仕事の道具として、もっと使いこなしたい——そう思っている人に向けて書いています。
一方で、生成AIをまったく使ったことのない人のための入門書ではありません。エンジニア向けの技術解説書でもなく、専門知識は前提にしていません。メールの文面の作り方や、特定のサービスの操作手順そのものを解説する書でもありません。
渡したいのは、答えよりも見方
Section titled “渡したいのは、答えよりも見方”さとりのしょが扱うのは、道具の性質——いわば原理原則です。ただし、それを覚えてもらうこと自体が目的ではありません。知っていると、仕事での使い方が変わる。だから扱っています。
まず、余計な壁にぶつかりにくくなります。 生成AIが苦手な問題を、無理に生成AIだけで解こうとしなくなる。「これは、AIにそのまま頼む問題ではなさそうだ」と、頼む前に気づけるようになります。
壁にぶつかったときも、自分で考えられます。 「プロンプトが悪いのか」だけでなく、「そもそもこの問題を、生成AIに解かせようとしてよいのか」と、一段上から見直せるようになります。
試行錯誤の方向も、よくなります。 試行錯誤を減らしたいわけではありません。同じ努力をするなら、結果につながりやすい方向へ努力できるようにしたいのです。
そして、新しい道具にも応用がききます。 生成AIの世界は変化が速く、新しいサービス、新しいモデル、新しい機能が次々に登場します。特定のサービスの使い方だけを覚えても、その知識は短い間に古くなりがちです。
一方で、生成AIは何をしているのか、コンピュータはデータをどう扱っているのか、プログラムと生成AIは何が違うのか、どんな問題をどんな道具で解くのか——こうした基本的な見方は、道具が入れ替わっても、すぐには古くなりません。
だからさとりのしょでは、記事のテーマを決めるときに、「何を教えるか」より、「読んだ人に、どんなものの見方を持ち帰ってもらうか」を大事にしています。ここでは、それを「視点」と呼んでいます。答えやテクニックを並べるのではなく、原理原則を手がかりに自分で考えるための視点を、ひとつずつ増やしていく。視点がひとつ増えるたびに、仕事に合った道具や使い方を選べるようになる。そういう書でありたいと考えています。
そのまま、もっと使ってください
Section titled “そのまま、もっと使ってください”これからも、たくさん試してください。そして、壁に当たったとき、もう一段先へ進みたくなったときに、ここへ戻ってきてもらえればと思います。
道具に振り回されるのではなく、その性質を知ったうえで使いこなす。そんな「賢者」に一歩近づく助けになればと願って、この書を少しずつ育てています。
出典: さとりのしょ — https://satorinosho.jp/introduction/